運慶作仏像等のストーリーを歴史AIガイドが伝える多言語音声ガイドアプリ整備
令和6年度 文化庁「地域文化財総合活用推進事業」実施報告
運慶作仏像等のストーリーを歴史AIガイドが伝える多言語音声ガイドアプリ整備

事業の背景と目的
三浦半島・横須賀には、鎌倉時代を代表する仏師・運慶が手がけた仏像をはじめ、武家文化800年の歴史を伝える貴重な文化財が数多く存在します。しかし、これらの文化財の価値や背景にある深いストーリーを来訪者に十分に伝える手段は、これまで限られていました。住職や専門スタッフが不在の時間帯には、外国人参拝客への対応も課題となっていました。
一般社団法人BUSHIDO文化協会(B文協)は、令和6年度に文化庁「地域文化財総合活用推進事業」の採択を受け、三浦半島・横須賀および鎌倉の寺院4カ所を対象とした多言語音声ガイドWebアプリの整備に取り組みました。
取り組みの内容
① 対象寺院と文化財
本事業では、運慶作仏像ゆかりの寺院を中心に、以下の4カ寺を対象としました。
横須賀市内の浄楽寺(芦名)は、1189年に和田義盛夫妻の願いにより運慶が造った5体の仏像——阿弥陀三尊像・不動明王像・毘沙門天像(いずれも国指定重要文化財)——を安置する寺院です。運慶の仏像制作技法の最古の事例が残ることでも知られます。
横須賀市内の満昌寺は、源頼朝が三浦一族の当主・三浦義明の菩提を弔うために創建した寺院で、義明の像を御神体とする御霊社が境内に鎮座しています。
同じく横須賀市内の満願寺は、三浦義明の子・佐原義連の墓所であり、慶派仏師による観音菩薩像・地蔵菩薩像・毘沙門天像が収蔵されています。
鎌倉市内の浄智寺は、鎌倉五山第4位の禅宗寺院で、境内の歴史的建造物や庭園とともに、運慶の影響を受けた仏像・韋駄天像(いずれも鎌倉国宝館に寄託)を有します。
② 多言語音声ガイドWebアプリの制作

各寺院の拝観動線に沿って、チャプター形式の音声ガイドコンテンツを制作しました。浄楽寺は8チャプター、浄智寺は7チャプター、満昌寺は5チャプター、満願寺は4チャプターで構成しており、各寺院で1,000ワード程度の充実した内容となっています。
コンテンツは過年度の文化庁事業で整備した多言語看板・ARマンガの原稿資産を活用しつつ、音声ガイドとしての最適化を図り再構成しました。専門家(横須賀開国史研究会・横須賀市人文博物館学芸員等)による監修のもと、歴史的正確性と物語としての面白さを両立した脚本を作成しています。
対応言語は日本語・英語・フランス語・中国語(簡体字・繁体字)・韓国語の6言語。AIを活用した音声生成により、各言語でのナレーション音声を制作しました。デバイスはスマートフォンで、イヤホンを装着しながら文化財を目の前にして聴くスタイルです。
https://audioguide.bushido-powerspot.jp/ja
③ コンテンツの特長
音声ガイドの内容は、単なる文化財の説明にとどまらず、「なぜ運慶がここで仏像を造ったのか」「武士はなぜ仏像を造ったのか」「三浦一族の武将たちはどのように生き、何を祈ったのか」という問いを軸に構成されています。鎌倉武士の精神世界や武家文化の成立を、訪れた人が体感的に理解できるよう工夫しました。
また、各寺院の案内の末尾には、近隣の関連寺院を紹介するコンテンツを設けており、浄楽寺・満昌寺・満願寺・浄智寺の4カ寺を有機的に繋ぐ周遊促進の仕組みも盛り込んでいます。
④ 今後の活用に向けて
整備した音声ガイドアプリは、各寺院での有料提供(1寺院800円程度を想定)を通じて、参拝者の文化財鑑賞を深めるとともに、寺院の継続的な収益増への貢献を目指します。また、過年度に三浦半島9カ寺・横須賀市内に整備してきたAR歴史マンガ付き多言語看板との相乗効果により、三浦半島全体の文化観光コンテンツをさらに充実させていきます。
武家文化800年を「聴く旅」へ
「運慶の仏像がなぜここにあるのか」——その問いへの答えは、三浦半島の武家文化800年の物語そのものです。今回整備した音声ガイドアプリは、国内外の訪問者がその物語を自らのペースで、自らの言語で体験できる新たな手段となります。
B文協は今後も、三浦半島の文化財が持つ本来の価値を世界に届けるための取り組みを続けてまいります。
コメント